クレー射撃が上手くなりたい!


クレー射撃に入門したならばトラップ、スキートに関わらずみんな上手くなりたい!と思っているはずです。
限られた練習量の中でいかに無駄なく上達できるか?皆さん試行錯誤していることでしょう。

クレー射撃の競技力向上の為のポイントは大きく分けて5つあります。

1.身体能力
2.視力
3.柔軟性
4.フォーム
5.正しい基礎訓練


この5つの中で身体能力や視力は個人差が多い所ですが残りの項目は入門後の努力で補える部分となります。



1.身体能力について

クレー射撃もスポーツですので身体能力が高いに越した事はありません。学生時代に運動部に所属していたり、今現在もジムに通って鍛えている等も非常に重要なファクターとなります。

クレー射撃自体はボクシングのように20代でピークと言う事はなく生涯スポーツとして楽しめる競技です。
しかしながらオリンピックを目指すならば鍛え上げられた20代の身体能力の内に基礎訓練を行いスタートしなければなりません。
国内で国体出場を目指すのであれば一般的な体力でも十分である事は私を含め各都道府県の代表選手を見てもあきらかです。

私の競技生活を振り返ると、私は特に運動はしてこなかったですし、ジムで鍛える事もありませんでした。
身体能力のピークは30歳くらいまでで特に25歳前後の頃は3日続けて400発、計1200発を強化練習で撃っても翌日に疲れが残る事はありませんでした。
30歳を過ぎると1日300発撃つのがキツクなり整体やマッサージを定期的に受けるようになりました。
若さで撃つことが年々厳しくなる一方で業や技術で、それを補う感じで穴埋めをしていくようになってきました。

2.視力

視力に関しては瞬間視力と動体視力に分かれます。静止視力(一般の視力)に関してはメガネやコンタクトを使用して矯正されていれば良いと思います。
私の経験上では1.0〜1.2程度に修正されていれば概ね問題ない感じですが欲張って1.5矯正とかにしてもクレーか照星のどちらかしか見えなくなり目が非常に疲れてしまい失敗した経験があります。

瞬間視力はトラップならばクレーが放出された角度やスピードの情報を読み取るために必用な能力です。
これはクレーのスピードにより加速させるスイングのスピードを自動調整する上で、この能力が高ければ高いほど飛行線をトレースする事が容易になり撃発時にスイングが減速状態になり難くなります。
振出に必用な力配分の入力を正確に振り分ける事ができるようになります。
スキートの場合は放出からクレーと銃身が絡むまでがよく見えるようになります。

動体視力は放出の瞬間、クレーが線で見えている状況をどれだけ早く単体のクレーとして見る事ができるか?に関わる能力です。
動体視力が良ければ良いほどクレーは遅く見え撃発地点を正確に予測できるようになります。クレーが線で見えている時間が長ければ長いほど振出からクレーに照星が寄り切るまで丁寧に我慢して銃を振らなければなりません。
基本的にトラップはいかに我慢して目を動かさずにクレーに寄せる事ができるか?に尽きるのですが動体視力が良いと、この我慢の度合いが低くなります。
スキートの場合も動体視力が良ければ線で見えている時間が少なくなるのでクレーが銃身に絡んだ瞬間、照星とクレーの位置関係がハッキリ見えて、後は適正なみこしで撃つだけとなります。

私の競技生活を振り返ると、今年の4月からコンタクトレンズを導入して視力が1.2強まで矯正できた結果、乱視による境界線の曖昧さから背景に溶け込んでいたクレーがハッキリ見えるようになり動体視力も上がったのか出から良く見えるようになりました。

私の場合は乱視が縦方向なのでメガネのレンズから1ミリずれても少し角度が変わってもクレーは3つ以上に見えてしまう状況でしたがコンタクトレンズで全て解決しました。
結果、20代のころはこんな感じでクレーが見えていたよな!と思い出しました。クレーへの寄せへの我慢は半分以下になり射撃が変わりました。

3柔軟性

クレー射撃がスポーツである以上、柔軟性は不可欠です。
といっても、私も体はガチガチです。体は硬いよりやわらかいに越した事はありません。 無駄な抵抗と知りつつも一応はシーズンが始まれば気がついたときには普段からストレッチをして、もちろん射台に入る前は柔軟体操をしています。

体の柔らかさは射撃による腰痛や疲労を軽減してくれますしクレーが風で変化した時も柔軟にフォームで対応できるようになります。

また、トラップに関して振り出しを滑らかにゆっくり振り出す事にも関わり、スキートに関しても挙銃のしなやかさに関わってきます。

もちろんショックの抜きに関して反動制御も体の柔らかさで違いが出てくる事かと思います。
初めに言いましたが硬いより柔らかいに越した事はありません。
ですから、普段から出来るだけストレッチをして、特に射台に入る前は入念に行う事をお勧めいたします。

また、過去に特別強化指定だった頃、筋力バランスに関してスポーツ医学的にレクチャーがありました。
当時のナショナルチームの体力測定をした所、例外なく男女共に背筋は強いけども腹筋が弱く、また大胸筋が少ないとの結果でした。

通常のJOC加盟のスポーツ競技団体では筋力トレーニングや持久力、柔軟等のトレーニングもスポーツ選手である以上当たり前のように行っている中で、特にはクレー射撃競技の選手はそのような事を行っている人はほとんどいませんでした。

この結果に対し基礎体力の向上のためのトレーニングを行うように指導されたのを覚えております。
背筋が強いのは恐らく競技の特性上銃を支えるのに頻繁に使う事から自然にアップしているのだと思います。しかし、背面に対し全面の腹筋や大胸筋の量が少なくバランスが非常に悪いとの事でした。

このバランスの悪さは腰痛の原因だったり、発射の衝撃を吸収しきれずにダメージは背中に抜け肩甲骨の裏辺りが痛くなる事につながるそうです。

ですから、何もお金をかけてジムに通う必要なないので腹筋運動と大胸筋を意識した腕立て伏せを行ってくださいと指導されました。

4.フォーム

どのスポーツにおいても、その競技に対して基本は存在し、基礎となる正しいフォームと言う物が存在します。クレー射撃においても当然あります。

ただ日本国内ではフォームに関してのノウハウはほぼ無く、クレー射撃競技が強い諸外国のように自然淘汰されて洗練された基礎的射撃フォームの指導は、ほぼありません。

諸外国ではクレー射撃はスポーツであり競技者は引退後その蓄積されたノウハウを次弾装填するように若い世代に受け継がせ更に進化していきます。
若い世代は30年かけて研究してきた技術を10年で叩き込まれ、また次の世代にさらに進化改良された技術を継承させていきます。

日本国内では選手は生涯現役を目指し、またその技術は一代限りで受け継がれる事も無く無くなっていきます。
しかしながら、クレー射撃の場合、日本国内では趣味の中から目指すオリンピックであり他の競技と違い、何年後かのオリンピックを目指してアスリートとして準備育成していく環境にもありません。

そうした上で諸外国との一番の違いはスタートできる年齢にあります。
14歳くらいから競技を初め10年後に世界で戦える技術を身に付けて頭角を現す欧米とは最短でも18歳からしか所持する事ができない日本国内と埋めることができない溝があるのも事実です。

この為、グローバルスタンダードと言える基礎訓練や射撃フォームの情報は国内にはほとんど無く、結果的に弾数を撃って長い年月をかけて自分で研究して覚えていくしかありません。

また、ある程度自己流で覚えてしまった後で基礎訓練が足りないと気が付き、その段階で始めてもまったく遅いと言う事はありません。むしろ足りない物は補うべきだと思いますが、ほとんどの人は、いまさら地味で簡単な基礎訓練を点数を落としてまで行う事をしません。

ある程度技術が上達している人は、足りない要素が基礎競技力だとしても、習得したいのは必殺技であり、すぐに結果が出る方法を模索しています。

最終的には照星とクレーが当たる位置関係にあるときに引き金を引けばクレーは割れますのでフォームは二の次だと私も思います。

しかしながら無駄なく楽に狙点に照星を送り込みと言う事に対してフォームは重要となってきます。
結論的には常にクレーを正面で捉えることができるようにすればトラップの場合、どんな角度でも高さを調整するだけとなりストレートを撃つのと変わらなくなります。

スキートの場合でも挙銃が完璧にできる事が前提で構えた時には銃身もしくは照星にクレーが絡んでいれば、その時にクレーを正面で捉え続けることができれば見越しを確認して十分時間が余り、当て続ける事が可能となります。

それには肩、腰、足首の回転でクレーを追うことができる腰位置と重心が重要となってきます。
スウェーで初動からクレーを追うのではなく銃の角度をダイレクトに変えていくフォームの訓練が必要となります。

まずは基礎的なフォームを徹底的に覚えこみ、そこから自分の強い射撃を模索していく事が大事なのです。

5.正しい基礎訓練

正しい基礎訓練に関しては、まずは縦の動きが重要です。
トラップはストレート、スキートは1番、7番、8番が基本となります。もちろん入門した当初は当然ここから始めていることでしょうが、徹底的に正しい縦の動きが出来るフォームを体で覚えることが非常に大事です。

結論的にはトラップもスキートも横の軸回転と縦方向の調整でスイングは成り立ち、横のスイングがクレーに同調しているならば高さの調整だけとなるので角度は関係なく常にクレーを構の正面に捕らえトラップで言えばストレートを撃つのと同じになります。

クレーに対する照星の寄せと高さ調整は横の動き主導で高さを合わせる【横+縦】の動きのみで捉えることが出来るようになれば練習用のクレーならば、そのほとんどが楽勝となります。
あくまでも横と縦の2軸運動でありスウェーという3軸目の動きは余分と言えます。

スウェーは銃自体の角度がダイレクトに変わるのではなく横に流れますのでクレーに追いつくあたりでブレーキがかかりやすく、この為に見越しが余計に必要になります。

基本以上の動きはほとんど必要なく、特に縦の動きが出来ていないと物理的に当たり難い角度がや射台が出てきます。

クレーを常に正面で捕らえるようにするためには基礎競技力の向上が必須となり、この訓練は地味でつまらないのですが、上達する上で必要な消費弾数を大幅に減らし、数を撃って覚える人の半分以下の弾数で上達を望むことが出来ます。

ただ消費した弾数に対する経験則に関しては、その差を埋める事が出来ません。
経験則とはメンタル的な強さやトラップの場合、上目を撃った時に無意識に銃口を無理矢理下げて二の矢で当てたりするスキル的な要素です。
スキートで言えばゼロ発進で出遅れた時などのリカバリーなどが経験則と言えるでしょう。

弾数は撃てる事に越した事はありませんが、私自身は射撃場外での訓練を重要視しています。
家で訓練した事を射撃場でどれだけイメージ通りに行えるかの確認をすると言う、イメージに対して実射とのすり合わせをする方法が最も効率が良いと思っています。
このような練習方法ですと練習もダラダラ撃つのではなく1発も無駄にしないで撃つ、と言うような課題を持った練習となりますので内容の濃いものとなります。

スキートの場合はノータイマーで満射を大量生産する訓練が大事です。
ノータイマーとタイマーの違いは、まさに3秒タイマーだけですので、挙銃が失敗しないことが前提ならば頬に銃床が付いた段階でその後の処理はタイマーもノータイマーも変わりません。
クレーの放出を自分のタイミングで行えるノータイマーでコールしてクレーが放出され銃が頬についてクレーを追いかけ追い越し発射してクレーが割れてフォロースルーが出るまでが目の中に残らなければなりません。
これがほぼ出来るようになれば後は不確定要素の3秒タイマーの中で挙銃をクレー放出の瞬間に成功させることが出来るかどうか?だけとなります。

トラップならばストレートや初心者セットでの練習となるのですが公式に参加する頃になるとこうした緩いセットでの基礎訓練は疎かになります。公式セットに慣れるためと言うのが主だった理由なのでしょうが、私的には公式戦で良い点を撃つ為に、公式セットの練習はほとんど必要ないと思っています。。

もちろん、慣れは必用かも知れません。ですから撃つ事が禁止ではありません。
しかしながら、遅いクレーが当たらないのに速いクレーが当たるわけもなく、慣れからスコアーの上達を目指すとなると、それこそ大量に弾数が必要となります。

ですから、例えば公式セットを4ラウンド撃って一回22〜23点を撃って喜ぶのではなく、遅いクレーで100満射を目指すのが正しいと言えます。


これには理由があります。
1つ目は正しい縦のスイングを体で覚えるくらい出来ていないと公式セットでは初動の縦の動きは銃身自体の角度が変わることなく後形となり左肩が上がり山なりスイングになります。
速いクレーの体感に体が反応してしまい反射的に一番楽な動きをしてしまうからです。

2つ目はクレーを正面で捕らえる為には振り出しの初動からクレーに寄せる過程をしっかり目の中に入れる訓練が重要だからです。
クレーが速いと線で見えている時間が長くなり無意識に目だけがクレーを追うために銃が動かない時間帯が発生します。

この為に出だしからクレーに照星が寄って行き狙点で撃ってクレーが割れるまでが一連の映像として目の中に残らず、飛び出したクレーが見え次にはクレーと照星が近寄っていて、もう撃つ瞬間だけしか目の中に残らないのです。

クレーが遅ければクレー出の速さにだまされる事なく、このクレーに照星を寄せる訓練の成功率が格段に上がるのです。

目を止めて銃だけを振り出しわずか銃身2〜3本動いたら照星を中心とした視界でクレーを追う、目を遅らせての動きは本能に逆らう動きなので意識して行う必要があります。
これはボクサーが目を瞑らないでパンチを避ける訓練と同じで意識をして行わないとクレーが出た瞬間一番初めに反応するのは目と言う事になりますので初動から寄せまでが目の中に残らないのです。

遅いクレーで、この目を止める振出が無意識下でも出来るようになれば、公式セットでも若干の意識で出にだまされる事なく振り出せるようになります。
これが、自分の物になっていれば公式セットでも寄せる練習は可能となり、公式セットでのみの練習でも良いでしょう。

しかしながらこのレベルに到達するのはかなり大変です。
ですから、遅いクレーでしっかり無駄なく正しいスイングで、この訓練を行い基礎競技力を向上させることが大事と言えます。

寄せる射撃が出来るようになると狙点はクレーに追いついた瞬間となります。
事実上、始めたばかりの初心者の場合クレーの後ろを撃っている限り割れる事はありません。
先を撃てば弾のショットコロンが帯状に飛んでいるので、それが通過する時にクレーが絡めば割れる事もありますが後ろを撃っていると弾はクレーに当たる事はありません。

しかしながら、クレーより早い等速のスイングもしくは加速しているスイングならばクレーに追いついた瞬間でも割れるようになります。
また後ろを撃って外れたとしてもクレーも照星も同一視界上にありますので二の矢の的中率は高い状態となります。
同じ後ろを撃つのでもブレーキがかかって減速をしているスイングや完全に止まってしまっていると二の矢もまた後ろを撃ってしまう事がほとんどです。

まずは、クレーに照星を寄せる射撃が出来るように訓練して行くために、極力公式クレーは撃たない事が大事です。
正しいスイングと正しい目の動き無しに公式セットばかり練習しているとクレーに照星を寄せて行く射撃ではなく、このスピードでこのクレーの角度だとクレーはここに飛んでくると言う予測位置に一気に銃を振り込んで銃は予測地点で止まり完全な点撃ちになってしまいます。

調子の良い時は予測と現実が合致し気持ち良い様に当たりますが一度ズレ出すと予測地点のへの意識はどんどん遠くなり完全な待ち撃ちとなりスコアーは纏まらなくなります。この点撃ちでハイスコアーを目指すとなると常に予測と現実が合致するように定期的な訓練が必要となり弾数を大量消費しなければなりません。
また、ズレた狙点の修正に時間がかかったり、射撃場やセット、放出機によりスコアーにムラが出る事となります。

公式セットを練習しないでいきなり公式戦に参加すると言うのは非常に不安なのは良くわかりますが、想定外の方向にクレーが飛んでビックリするのはせいぜい1周5枚です。最初の一周で5枚中3枚当たれば良いくらいの気持ちで、丁寧に横に振り出し、少し撃破点が遠くなっても確実に寄せて撃っていく事が大事です。
慣れてきたら少しずつギヤを上げていく感じでラウンドを回れば良いのです。

私は3年間一人での公式セットでの練習を基本的に禁止されていましたので公式セットは公式戦のみでした。
コーチが同行している時に年間5ラウンドくらい公式セットを撃つ感じでした。
当時は非常に疑問に思っておりましたが今では、その意味が良くわかります。
練習で公式セットは撃たなくても、すぐにAクラスは撃てましたし基礎訓練を中心とした遅いセットだけで十分なのは身を持って体験しております。

本当に基本からビッチリ教わりたいという方には基礎訓練を徹底しますが、実際には非常に詰まらない射撃の繰り返しとなります。私自身そう思っておりましたが試合でのスコアーは確実に右肩上がりでした。

しかしながら選手を目指して行くならともかく趣味の中での競技で行くならば一般的な訓練としてはメリハリを付けることが大事かと思います。
例えば一日4ラウンド撃つならば3ラウンドを遅いクレーで寄せる練習をして、ラスト1ラウンドは公式セットで目の動きがだまされないように意識をしっかり持って、遅いクレーと同じように撃つ事ができるか?の確認をしてみるとか、遅いクレーで24点以上が2回出たら公式セットを撃ってみる等の縛りを付けるとかです。

結論的には公式セットでの練習はクレーに慣れる為ではなく反射で上体が後形になったりしないように、また本能に逆らう目の動きを無意識下でも出来るように訓練する為に行う物です。

スコアーが出ないと不安になりますが練習は練習と割り切る事も必要です。スコアーは試合で出せばよいのですから練習は0点でも良いのです。
この0点でも良いという割り切った練習も時には必要となります。

ここもメリハリが必用で、今日は振り出しだけの練習、このラウンドは目の動きの練習、だから0点もの良い。このような割りきりが非常に大事なのです。
また、今日はスコアーを出す練習となれば全開で撃ってみるのも良いでしょう。

自分に合った練習方法を模索し正しい基礎訓練を行い常にクレーを正面で捉えることが出来る射撃を目指しましょう。